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zoom RSS てんとう虫コミックス新装版「オバケのQ太郎」1・2巻レビュー(F全集との比較を中心に)

<<   作成日時 : 2015/08/23 23:08   >>

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発売から一ヶ月が経ちますが、
みなさまのオバQライフはいかがでしょうか。

というわけで遅すぎではございますが、
実際に発売されたてんコミ新装版オバQについて、
まとめ&布教をしていきたいと思います。


ではまず今回発売された本についてのおさらいを。

タイトル:「オバケのQ太郎」

レーベル:「てんとう虫コミックス」

サイズ:新書版

出版社:小学館

著者表記:藤子・F・不二雄 藤子不二雄A(共著)

底本:虫プロ商事発行「オバケのQ太郎」全12巻(1969年〜)
 ※表紙、裏表紙等のデザインは新規(イラストは流用・コラージュ)

価格:本体490円+税(8%でおよそ529円)
電子版:紙媒体と同時発売、こちらは税抜400円+税(およそ432円)
本文230ページ前後

1、2巻は2015年7月24日発売、
3、4巻は8月28日発売、
以降毎月28日頃1冊ずつ発売で全12巻

※「新オバケのQ太郎」の発行については未定

ということで、重要になるのは、
今回発売された「オバケのQ太郎」は、
藤子・F・不二雄大全集で発売されているオバQとも、
以前てんとう虫コミックスレーベルから発売された全6巻の「傑作選」とも、
藤子不二雄ランド版や自選集とも異なり、
1969年に虫プロ商事から「虫コミックス」レーベルで発売されたものの
新装版であるということです。


収録作品数は
F全集(確認できる全話)>FFランドオバQ(全20巻)
>虫コミオバQ=てんコミ新装版(全12巻)>てんコミ傑作選(全6巻)

の順に多くなっています。

※当ブログでは、2015年にてんとう虫コミックスで発売された
全12巻・新書版の「オバケのQ太郎」を
便宜上「てんコミ新装版」と呼びます

※1976年にてんとう虫コミックスから発売された全6巻の「傑作選」にも、
1985年ごろにカバーデザインを一新した「新装版」が存在しますが、
それらはまとめて「てんコミ傑作選」と扱うものとします

というわけで、
2015年現在新刊で購入できるのは
F全集版と今回のてんコミ新装版です。

前回の記事でも紹介しましたとおり、
作品数および資料性の高さ、カラー原稿の美しさの点では、
F全集が圧倒的ではありますが、
本の持ち運びやすさや価格、
F先生存命時に選ばれた作品・収録順であるということでは
今回の新装版発行にも十分な価値があると考えます。

なにより子どもたちに気軽に読んでもらたら良いなあと願うところ。

それでは、実際に発売された新装版について
画像を交えて紹介していきたいと思います。

まずは装丁について。

以下、半分くらいの画像はクリックで拡大します。適宜ご覧ください。


カバーは各所で賛否両論であった祖父江慎氏のデザイン。
帯がついていると分かりにくいですが、
Qちゃん自身には色がついていないのが特徴です。
背表紙や背景キャラの色など、
一冊ごとに基本となるカラーが設定されているようなので、
12巻揃ったときにどのような感じになるか楽しみです。

裏表紙やカバー袖はこんな感じ。
黒Q"

表紙とは逆にQちゃんが黒く塗られています。
そして袖には「作者のことば」と「オバケのQ太郎のあゆみ」が掲載。
作者のことばは虫コミ版のものと同じようです。

さらに虫コミにあったカバー下のおまけも再現。
(本ではなくカバーの裏そのものに印刷されている)
大食とかいてたいしょくと読む。

これは楽しいですね。

2015年現在のてんとう虫コミックスの価格が
税込463円なのを考えると多少高いですが、
本文ページ数も230ページ前後と厚めであり、
デザインも印刷も凝っていることを考えると妥当でしょうか。
1冊529円はぎりぎり小学生のお小づかいで買える設定かなと思います。

カバーを外した本体は前述のイメージカラーで塗られていました。
左:2巻の巻末側、右:1巻の表紙側
全12色?


帯には公式サイトを紹介する「Q」Rコードがあり、
コードの中心にはQちゃんが居ました。
これも可愛い。
兄が居ればRがついたのかな


そんなこんなで、装丁に関しては、
統一デザインであったF全集版より
とても楽しいものに仕上がっておりました。

 ◇

つづいて本文について。

現在新刊で入手可能なもう一つのシリーズである
F全集版とは異なっている箇所が多く見受けられますので、
以下に挙げておきます。

※私は虫コミ版を所持していないため、
てんコミ新装版と虫コミ版との比較ができませんでした。
そのため、基本的に両者は同じものとし、
以下、F全集との相違は虫コミ版との相違とみなします。


・セリフの変更点
 (1)「……」の多用

語尾に「。」を付ける方針は共通ですが、
今回の新装版では語尾に「……」がついているセリフがみられます。

より泣かせる効果か

てんコミ新装版1巻最終話である「なくなQちゃん」より。

この前のコマでも
F全集の「ぼくの家族は帰ったよ。」に対し、
「ぼくの家族は帰ったよ……。」
となっており、てんコミ新装版(=虫コミ版)の方では
余韻というか情緒を演出するようなセリフになっております。

藤子・F・不二雄大全集が
「作者の意図ではない要因で改変が行われていたと考えられる場合は、原則として可能な限り本来の姿にもどすように努めた」

という方針のもと編集されていることをふまえると、
「……」が無いセリフのほうが本来の形に近いと推測されるでしょうか。

しかし今回の単行本では前述のように、
F全集のセリフ表記に準じてはいないので、
セリフや原稿に加えられた修正(変更)に至るまで、
本当に「虫コミ版をそのまま新たに発行し直した」ということのようです。

つまり、F全集の内容から虫コミの収録エピソードだけ集めて
そのままデータを流用して作成したような単行本ではない
、ということが
確かめられました。

実は私は実際に読み比べてみるまで、
「F全集以降に発売された本だから
基本的に全集と同じセリフと原稿なのだろう」と
勝手に勘違いしておりました……


ということで、
虫コミ版でのセリフ回しが先生の本意であったかは不明ですが、
今回の新装版は
「F全集から収録話数を減らした廉価単行本」などではなく、
明確に異なった方針で編集された、
かつF先生の存命中に出た単行本の復刻
として、
発売される本だということです。

これは、てんとう虫コミックスの「ドラえもん」と
F全集の「ドラえもん」の違いと同じだと考えれば分かりやすいでしょうか。


他にも以下のようにF全集と異なっている箇所があります。


(2)セリフの一部削除

クリックで拡大。


「テレビが見たい」より。
てんコミ新装版(虫コミ版)では、
「えー、これから教育番組を始めます。」の
「えー」という前置き部分が無くなっています。


(3)単語の言い換え

これは元にしている版にかかわらず、
その時々で修正が入る可能性があります。
具体的には病気や人権に関わる記述など……

「正ちゃんにプレゼント」の話では、
デパートを買おうとしたQちゃんの代わりに
男性が病院に連れて行かれるエピソードがありますが、
F全集では「わしは病気じゃないぞ。」(1巻 p295)に対し、
てんコミ新装版では「患者はわしじゃないぞ。」(2巻 p218)
と、なっていました。
FFランドもてんコミ新装版(虫コミ版)と同じセリフになっています。


・絵の修正
(1)原稿欠落によるトレスや印刷物からの複写など

F全集が一番良い状態とは限らない困った例


この「テレビが見たい」の回の1頁目は
原稿が無くなっているらしく、
1段目のF全集では印刷物からの複写が行われています。
この「印刷物」が何かは記載がありませんが、
画像のかすれ具合からみると、
初出の少年サンデーではないかと推測されます。
確かに最初に世に出た状態のままですが、
あまりにも線がつぶれて見にくいという印象は否めません。

そして2段目は参考提示ですが、
藤子不二雄ランドに収録された際のもの。
この時点でこの頁の原稿は無くなっていたようで、
雑誌または単行本からトレスで作成された原稿をもとに
印刷されているようです。
そのせいか、正ちゃんのつむじや表情、
ママの手足の描写に差異が出てしまっています。

3段目が今回のてんコミ新装版のものですが、
1段目と比べると、基本は同じ線のように見受けられますので、
おそらくはこれが元の原稿に一番近いのではないかと推測されます。
F全集版の刊行後に原稿が見つかった…ということでなければ、
虫コミックス版(1969年)時にはまだ原稿が現存していたので、
この単行本を取り込んで印刷がなされたということではないでしょうか。


<追記>
藤子・F・不二雄大全集の編集にも携われておりました
漫画家のしらいしろうさんから情報を頂きました。
(F全集と同じ)「初出の印刷物からの複写」とのことですが、
調整を行ってから製版に入るなど、
技術的なノウハウの蓄積によって改善されたものだそうです。
参照→(しらいさんのツイッターでのリプライ)
 https://twitter.com/seegen/status/635466421011529728
 https://twitter.com/seegen/status/635490666299064320

結果として、このような箇所に関しては、
今回の新装版の方がF全集より絵が見やすくなっている
ということが言えます。


(2)コマ割の変更

単行本化に際し、
トビラ絵を本編の冒頭に組み込んだ作品に関しては、
F全集では雑誌掲載時のトビラ絵を採録し、
本編で削られたコマを元に戻す方針がとられているようです。

具体的にはこちら「Qちゃんのテレビスター」の回。
引用の範囲を超える量なので、セリフは読めないようにわざとつぶしてあります。


F全集版ではカラーのトビラ絵を複写で取り込み、
そのまま1頁目として本編をはじめています。(全集1巻p370,371)


同じエピソードですが今回の新装版ではこちら。(1巻p205)
加筆修正と見るか、やむを得ず削ったとみるか、そのあたりの判断が難しいです。


トビラ絵をタイトルとして本編に組み込んだことで、
後に続く部分から4コマが抜かれています。

こういうのは非常に興味深くも、難しいですね。

単行本向けにF先生が修正したとも取れますし、
トビラ絵が収録できなかった故にやむを得ず本編を削ったとも取れます。
F全集では資料性を優先して
失われたコマとトビラ絵を収録したと思われますが、
マンガとしては今回(虫コミ)の構成の方が見やすいですし、
新たにQちゃんのカットが追加されているとも言えます。

こういった葛藤を
藤子・F・不二雄大全集の編集スタッフの方は、
たくさんされてきたのだと思われます。

そうした中でのひとつの答えが、
今回の新装版でもあるんじゃないかなと感じました。

 ◇

最後に、電子版について。

こちらは操作性や価格については、
利用する電子書籍ストア、サービスによって異なると思われますので、
元にしている本編データは同一のものであると想定し、
全体的なことのみ紹介していきます。
(私はeBookJapanで購入、WindowsPC用リーダーを使用しました)

・紙媒体との相違点
同じてんコミ新装版として比較しますと、
裏表紙、カバー裏、カバー下本体、
帯、カバー袖のデータは収録されていません。

「作者のことば」やカバー裏のおまけは読めなくなっています。

扉にあたる頁や奥付、目次頁はあります。
また、電子版としての奥付も別に用意されていました。

出版社(小学館)による本の紹介文
公式サイトと比べて、
抜粋した形で収録されていました。(利用サービスによるかも)
こちらは紙媒体には無い要素です。


・画質
これも利用するサービスによると思われますが、
通常読む分であればまったく問題はありません。
部分的な拡大や頁送りの単位も調整ができます。
もともとカラー原稿だった頁については、
紙と性質の違いから、電子版の方がグレーの階調が見やすい印象です。

・価格
定価ベースの比較でも、
電子版の方が安く設定されています。
紙媒体529円/電子版432円
フェア等でさらに下がる可能性もあり。

・持ち運び
モバイル端末にリーダーを入れて書籍データをダウンロードすれば、
いつでもどこでも読めます。
ただし対応していない機種やブラウザがあったり、
そもそも端末の電源に依存する点は言うまでもなく。
本の厚みと重量を考えなくて良いのは助かります。

・破損、消失
サービスの存続に関しては運営会社によるとしか言えませんが、
どこか別のサービスに吸収される場合が多いようです。
一般的に購入した記録が残っていれば再ダウンロードは可能なので、
端末が壊れても「本は無事」ということになります。
紙媒体の場合は汚損、破損は復元不可能ですので、
そこは大きなメリットでしょうか。

・入手しやすさ
どこに住んでいても、何時でも買える、
引っ越しても引っ張り出す必要は無いのはありがたいです。


・配信状況
コミック小学館ブックス、Kindleストア、eBookJapan、BookLive!、
honto、kobo、Yahooブックストア、紀伊國屋書店ウェブストア、
セブンネットショッピング、DMM 等、
には配信あり。
BookWalkerには配信がありませんでした。
また配信ストアの多くで試し読みが実施されています。

・データ容量(参考)
1巻:eBookJapan55.1MB/honto45.3MB
2巻:eBookJapan57.3MB/honto47.0MB

 
 ◇

ということで、
今回のてんとう虫コミックス新装版と、F全集版と、
そして電子版。
それぞれに良いところもあり、
惜しいところもある状態で、
今回のオバケのQ太郎も発売されています。

10年前には読むことすらままならなかった状況を考えれば、
まず買えること、
そして形態を選べるようになったこと、
それが本当に嬉しくてなりません。

この記事が「オバQ」を読んでみるきっかけや
参考になれば幸いです。

文字数と画像が多くなってしまったので、
1、2巻のおすすめエピソード紹介はこちらの記事で!

てんコミ新装版「オバケのQ太郎」1・2巻見どころ紹介!

発売前に書いたオバQおすすめエピソードや、
これまでの経緯についてはこちらの記事へ。
てんコミ新装版記念「オバケのQ太郎」のススメ!

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