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zoom RSS 映画ドラえもん「新・のび太の日本誕生」感想その1 〜ぼくらがつながる物語

<<   作成日時 : 2016/03/31 01:16   >>

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大変遅くなりましたが、
映画ドラえもん「新・のび太の日本誕生」の感想です。
以下、映画の内容についてのネタバレを含みますので、ご注意ください。

今年の映画の感想をひとことでまとめると……
「『日本誕生』ってこういう物語だったのか!」


そして、映画の内容をひとことで伝えるならば、
「日本人の来た道、そしてのび太の進む道」
「ぼくらがつながる物語」

ということになるでしょうか。

以下、もう少し詳しく述べていきたいと思います。



☆「のび太の物語」への再構成

今回の映画で大きな感動を生み出した、
「ニセモノの歴史と本物の歴史」
「家出と自立心、そして親子の愛情」
これらを具体的に描いた場面は、
原作や前作の映画には無かったものです。
しかしそれらは全くのオリジナルで加えられたものではなく、
ほぼ全てが原作に散りばめられていた要素の
延長線上にあるものでした。


89年の映画「日本誕生」は、
F先生の原作マンガ連載と同時進行で制作された作品のため、
連載終了後に加筆修正された部分は反映しきれていません。
また、その原作についても、
ページ数の関係で駆け足になってしまったクライマックスを
もっと膨らませたかったとF先生自身もおっしゃっていたそうです。
(雑誌「エンタミクス」2016年4月号P46の八鍬監督インタビューより)

つまり今作は全体を俯瞰して再構成する機会でもあり、
八鍬監督はそれに見事成功したと言えるでしょうか。


では、具体的にどういうところが凄かったかと言うと、
"その世界の問題を解決すること" が、
"のび太自身の物語にもなる"  
ということを、明確にしたところです。

「その世界の問題を解決する」とは、
新たに出かけた世界で出会った友達の抱える問題に
のび太たちが力を貸すという構成。
水戸黄門的でもあり、エンタテイメントの基本形の一つでもあるでしょうか。
この部分だけで充分面白い映画はできます。

しかし、できるならそれが異世界からの来訪者や協力者としてではなく、
「のび太自身の成長や人生にも関わる」ようなお話を観てみたいなと思います。
それは「ドラえもん」という作品でなければならない意味になりますし、
作品が長く心に残る要素でもあるでしょう。


この作品ではギガゾンビという未来人によって、
原始時代に生きる人々が虐げられ、
その歴史を歪められようとしている「問題」が起こっていました。

原作・前作ののび太たちも、間接的にではありますが、
ヒカリ族を解放し、ギガゾンビが逮捕されることに貢献しています。
しかし、それら一連の出来事が
のび太自身に深く関わるような物語であったかと言うと、
そこまでではなかったと感じます。

もちろん原作ののび太が何も変わらないのではなくて、
この「ドラえもん」という作品全体でゆっくりと描かれていた
彼の成長物語の一部だったのでしょう。

けれども今回の「新・日本誕生」では、
【この一本の映画の中だけで】のび太の成長が伝わるように、
物語が凝縮されていました。


そもそも「ドラえもん」とは、
ダメなところと苦手だらけの少年が、
ちょっとずつでも頑張り、未来を変え、
孫の孫の世代へつないでいくというお話です。

今回の映画の中で、のび太は
原始人の少年ククルと出会い、
家族への想いや、新しい土地で生きていく決意と勇気に触れます。
ママ玉子とパパのび助はのび太の自立心の芽生えを見守り、
一方でペガグリドラコを育てたのび太は、
立派に育って欲しいと願う想いや、
愛情ゆえに心配するという親の気持ちを知り、
「ぼくも頑張る」という約束をして元の時代へ帰っていきました。

雪山で見た幻とのやりとりが彼の内面の反映だとするなら、
自立とは、誰の力も借りないでひとりで生きようとすることではなくて、
自分にできること、自分がやらなければならないことと向き合い、
前に進むことだと、彼なりに理解できたんじゃないでしょうか。

のび太が生還できたのも、
ククルと築いた友情によって譲り受けた犬笛と、
持ち前の発想力で生み出し、
愛情で立派に育て上げたペガたちのおかげだというのも、
なるほどなと考えさせられます。


☆ぼくらがつながる物語

そうして「今」を生きる「ぼく」が頑張ることで、
おじいちゃんのおじいちゃんのそのまた…であるククルから続く系譜、
パパやママの想いを引き継ぎ、
ノビスケやセワシの世代へつなげていくのでしょう。

野比のび太ひとりが歴史を左右している訳ではありません。
けれども、たくさんの「ぼく」が、
特別な人間でも優れた人物でもない「のび太」たちが、
生き抜いていくことが、
やがて歴史になっていくのだろうと感じられました。

これに関しては、
山崎まさよしさんの主題歌「空へ」がまた素晴らしく的確で、
特に「僕らが繋がる」という歌詞を目にしたときに、
ああ、この作品はまさに
過去から未来へ「ぼくらがつながる物語」だったのだ、と
ものすごく合点がいったのです。

いつか来る、ドラとの別れの時も、
やがてのび太の子孫が彼と出会う未来に
つながっているんだろうと思えます。


「日本人の来た道」が物理的な意味だけでなく、
歴史を紡いでいくことが、
「のび太が進む道」につながるということ、
そして彼が生きることが、
さらにその先の時代につながるということを
一本の映画の中で見事に描ききった作品だと感じました。


☆新たな「日本誕生」の物語

そうして、時間の流れがひとつにつながる事で、
ギガゾンビのやろうとしていたことが、
ククル、のび太、ドラが生まれペガ達が暮らすことになる未来、
それぞれの時代で精一杯生き抜く人々を妨げるものであると
観ている人にも強く感じさせるようになっていました。
ギガゾンビを倒すという「その世界の問題」に挑むことが、
そのまま「のび太の物語」を含めたものであることも明確になっています。

しかも、この構造自体は映画のオリジナルではなく、
原作もちゃんとそうなっているんですよね。
ククルのように大陸から移住してきた人々が日本人の先祖となったこと、
時代に応じて道具が工夫され、発達していくこと、
家族を大切に思う気持ちは変わらないこと、
のび太には体力・技術・知識はなくとも、
発想力と愛情で共同生活に貢献できるということ、
ギガゾンビが亜空間破壊装置を研究していたこと、
時空乱流等々がその影響と思われること……

ああ、自分は今まで何度も何度もコミックスをどう読んでいたのだろう?
ラストの対決や救出の描写は違うけれども、
このドラえもんという作品でずっと描いてきたこと、
ギガゾンビの企てが許せないということは同じじゃないか!

まさに原作にある言葉、要素を使って、
「今まで見えていなかった物語」を見せてくれた映画でした。
最初に述べたように、
「『日本誕生』ってこういう物語だったのか!」
ということを改めて知ることができたのです。


今の時代に「ドラえもん」を作り続けるということ、
原作も、以前に作られた映画もある状態で、
リメイク(再映画化)をすることの意味は、
ここにあるんじゃないかなと思います。

いや、個人的には意味とかそういうのを超えて、
新たな「ドラえもん」の世界が観れて、とても嬉しいのです。



☆ドラえもんとギガゾンビの対決について

ドラがやって来た目的はセワシの希望に従って、
のび太の面倒を見て、その未来を変えること。
ドラえもんとギガゾンビの二人は
同じように未来からの介入、改変を行っており、
ある意味で対照的だとも言えます。
しかし、ギガゾンビのやっていることは、
歴史の流れを歪め、
他の時代から立ち入ることのできない、
閉じた円環を作ってしまうだけでした。

そもそも彼はなぜ自分の居た23世紀を捨ててきたのか。
単に自分の王国を築くという野望の達成に、
原始時代が好都合だっただけかもしれません。
けれども「腐りきった未来を消し去るためにやって来たのだ」
と語っていたところから、
生まれた時代を見限るのに足るような出来事があった可能性もあります。

ギガゾンビが特に危険な時間犯罪者であるだけかもしれませんが、
少なくとも、彼のような存在を未来で生み出してしまったのは事実でしょうか。

では、人類はいずれ大きな過ちに行き当たってしまうのか?
とすれば、正直それはわかりません。
しかし、閉じた円環の世界が正しいとも思えません。
過ちを含んでいても、それでも進んでいかなくてはいけないのでしょう。
そうして、ククルの時代からのび太の時代までやって来たのですから。

終盤でギガゾンビも口にしていたように
ドラえもんは「子守りロボット」です。
次代を育てる役目として時に擬似的な親子となり、
そして機械であり道具でもあるという、
今作における重要な要素を同時に兼ね備えた存在でもあります。

これはちょっと拡大妄想解釈かもしれませんが、
ドラえもんとギガゾンビが戦うという展開自体も、
人類の歴史とこの作品のテーマの象徴的場面だったのではないかなと思えました。

22世紀生まれのドラえもんもさらに先の時代から見れば、
「化石の機械」なのか? 
と問うならば、それは否と言いたいです。

のび太を見守り、導き、
一緒に泣いて笑って遊んで、馬鹿やってくれる、
「子守りロボット」をそういう存在として創り出すに至った人々の
それまでの歴史の成果であると、
そんな見方もできるんじゃないかなと思います。

ドラは設定上、故障だらけで規格外ではありますが、
「子守りロボット」としての精神は彼だけが特別ではないだろうと感じます。
なにより、ともに暮らすのび太もセワシもドラえもんのことを
自分の役に立ちさえすれば良いとは思っていないでしょう。

作中でギガゾンビに打ち勝つことができた理由が、
信頼関係を築いてきた仲間の協力であり、
本物の歴史の上に成り立つ知恵や道具であったことからも、
大切なのは新しいとか古いとかじゃなくて、
その技術を使う人々の姿勢や心のありようだと
考えることもできました。


☆タイム・パトロールの描写について

ラストに登場したT・P隊長と隊員がそれぞれ、
F先生の別の作品である「T・Pぼん」に登場する
リーム、ぼん、ユミ子のビジュアルだったことは、
ファンサービスだったとは思います。

けれども「ぼん」の世界と役割(部署?)の違う
ドラえもん世界のT・Pとして「彼女たち」を出したことで、
「T・Pぼん」で語られている
『歴史っていいほうに向かって進んでるんじゃないかしら。
 少しずつ少しずつだけどね』

というメッセージを、今作にも重ねているのではないかと思えました。
後期「大長編ドラえもん」には「T・Pぼん」の要素が取り入れられていますし、
F作品全体に流れる歴史や未来の捉え方には、共通するものがあると感じます。

ともあれ、そうした「T・Pぼん」という作品については知らなくとも、
サングラスを外してのび太と目線を合わせるあの若き隊長の姿に、
歴史を改変するおそれのあるものを淡々と除去していくだけではない、
未来の組織とそこで働く人々を感じることができるのではないかと思います。

のび太やドラと、ギガゾンビがやったことはどう違うのか?
一人の幸福と全体の秩序は両立できないのか?
そういった矛盾や疑問を抱えて、悩みつつも、
その時代を精一杯生きている人を守ることが、必ず前に進んでいくことになると、
そう信じて歴史に携わっている人々がいるのだろうと、
願うことのできるT・Pの描写でした。

サービスでありながらも、かつ作中で意味のある存在になっているのも
見事だなあとうならされます。

そしてそれはT・Pだけでなく、映画全体にその方針が貫かれ、
ちょっとしたキャラクターの仕草まで、物語の構成要素として
意識して作られていたなと感じました。


☆まとめ 〜新しい「日本誕生」が誕生したぞ!

と、ここまで長々とストーリーについて語ってまいりましたが、
映像や音楽、声優さんの演技もとても素晴らしいものでした!
ドラたちの救出に駆けつけたシーンでの、
空を飛ぶのび太目線の迫力あるカメラワーク、
「夢をかなえてドラえもん」のアレンジや、
マンモス型ロボットと戦う場面でのBGM、
そして「毎日ブラシをかけてください…!」と
涙混じりに伝えるのび太の演技の入り込み具合……
クライマックスの盛り上がりが最高潮に達したところで、
主題歌「空へ」とともに、
その後ののび太たちを描いたイラストが映し出されるという演出に、
ただただ、拍手を送るばかりです。

全体的に「この場面はどういう位置づけなのか、何を見せるのか」が
明確に意識されているため、
映像も何もかも、それを最大限に魅せるために作りこまれている印象です。

八鍬監督の前作「新・大魔境」も
原作で描写が少なかったところを理想的な形で補った名作でしたが、
個々の場面のつながりが若干悪く感じられたところもありました。
しかし今回はそういったこともなく、
最初から最後までぐぐっと引き込まれ続ける作品でした。

今作は八鍬監督が脚本と絵コンテも兼任ということで、
全体の流れがうまく一本に収まっていたのかもしれません。

あえて惜しかった点を挙げるなら、
原始時代の風や光や音を感じられるような
「静」の場面をもう少し長く観たかったなあというくらいでしょうか……

親子の関係や自立がテーマに据えられていたことや、
ギガゾンビやツチダマの怖さなどについては、
前作の芝山監督の映画に比べて賛否があるかもしれませんが、
どちらが良いということでもなく、
それぞれの魅力になっていると思えます。

ククルに渡したほんやくコンニャクが
「しょうゆ味」だったことで、
逆に前作の「おみそ味」が「日本食の誕生」にかけてあったのか!?
ということにも気づかされました。

 ◇

そんなこんなで、
2016年の「新・日本誕生」は
のび太の自立心の芽生えを掘り下げ、
日本人の来た道がのび太が進む道につながり、
やがてドラの生まれる未来にもつながっていくという
歴史の壮大な流れを感じさせる作品に仕上がっていました。

原作や、前作の映画の世界をさらに広げた
まさに新しい「日本誕生」だったと思います。


拙くやたら長い文章でしたが、
ここまでお読み頂きありがとうございました。

あの場面のドラが!のび太が!といった叫びは、
後日に感想その2の記事で述べる予定ですので、
またのぞいて頂ければ幸いです。

 ●アップしました 
 →感想その2(各場面について)

 →初日舞台挨拶感想

☆映画ドラえもん「新・のび太の日本誕生」は、
2016年8月10日にDVD・ブルーレイが発売予定です。

金子志津枝さんによるエンディングイラストが
ポストカード10枚組で初回限定特典になるそうですぞ!!

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